玉本英子さんのお話(その4)〜ヤズディを助けた家族、IS戦闘員やその妻たちの実像

2月3日の「玉本英子さんの話を聞く会」で玉本さんにお話ししていただいた内容をまとめました。4回に分けて掲載します。最後の4回目は、3回目で玉本さんがレポートされたヤズディ教徒の女性を助けた家族とはどんな人たちだったのか、そしてIS戦闘員やその妻たちはどうしてISに加わり、いま何を考えているのか、についてです。

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モスルで、彼女が逃げ出したときに助けたイスラム教徒の家族(お父さん、お母さん、息子さん)に去年秋の取材で会いました。お父さんが言うには、「朝早い時間に水をまいていたら、彼女がやってきて、助けてくれと。びっくりした。ヤズディだと聞いた。ヤズディの人たちが捕まったとは聞いていたが、そういう人たちのことを見たことがなかった。家の両隣はIS幹部の家だったため、すぐに彼女を家に入れた。危なかった」。彼ら自身も危なかったわけです。それでどうしたかというと、「彼女と子どもを2階の隠し部屋みたいなところに連れていき、かくまった。彼女は床に横たわり、ときどき窓から外を見ていた」。取材中に、彼女から連絡が来て、話をしていました。今でもすごくいい関係でいます。

彼女を助けたということは非常に危険な行為でした。この人たちのことを、モスルに住んでいる他の人たちに話すと、「ありえない」「私だったらできない」「絶対無理だ」と。なぜかというと、ヤズディの人たちをかくまったことがばれたら、まずこの家族は捕まっただろうし、ひょっとすると処刑されたかもしれない。というのは、他の街でヤズディの救出作戦に加わった人が、公開処刑で首を切り落とされた事実があったからです。

この家族は、お金持ちではなかったですが、700ドルくらいを用意して、クルド自治区へ逃れた彼女の親戚に電話で連絡して、逃げられるように準備をしました。たとえば、彼女にニセの身分証明書を作らないといけないなど、この家族が全部準備したわけです。全く知らない人たちを命懸けで助ける、私だったらこんなことができるだろうか、とずっと考えています。多分、私だったら、密告はしなかっただろうが、「気をつけなさい、逃げなさい」と言って、自分は家の中に逃げ込んでしまったと思います。でも、この3人はそうしなかった。「なんで、そんなことができたんですか?」と聞いてみると、お父さんは「人間だから」「助けてくれと言われたから助けた」と言っていました。この3人を見ていると、本当のヒーローというのは、一般の普通の人たちから出てくるものだな、と改めて思いました。私はこの人たちを本当に尊敬しています。ドイツに行った女性は大変感謝していて、今でもお金をやりくりして、生活の足しになるようにと、彼ら家族に少しずつ送金しているそうです。

私はこれまで、空爆の犠牲者とか、ヤズディ教徒といった少数宗教の人たちに対する迫害について、お伝えしてきましたが、次に加害者の側、ISの戦闘員の人たちはどうなのか、どんな人たちだったのか、これも取材していますので、お伝えしたいと思います。

IS戦闘員には、ヨーロッパや中国などからの多くの外国人がいましたが、この人たちはISの宣伝映像を見るなどして参加したわけです。そのISのメディア部門を紹介したいと思います。これはISが宣伝映像として、彼ら自身で作ったものです。彼らは編集技術を教えて、支配下の各地で映像を作って、流していました。
ISの戦闘員について、去年の報道特集で放映したものをお見せしたいと思います。

ナレーション「収容施設にいる妻たちに話を聞いた。インドネシア人のこの女性は、宣伝映像を見て、2年前にISに入ったという。アルジェリア人の戦闘員と結婚し、子供を産んだ。『その当時は、本当にイスラム国があるのだと信じていました。それで行こうと決めました。でも、実際はすべて嘘でした。美しい学校や病院をビデオで見ましたが、すべてフェイクでした。学校なんかなかったし、子どもたちは家の中で遊んでるだけ。ニュースを見ることもできなかったし、インターネットも使えませんでした』。夫は去年、戦闘に出た後、行方が分かっていない。『息子にちゃんとした教育を受けさせたいです。夫をさがして一緒に暮らしたい。私は後悔しています。二度と同じ過ちは繰り返しません』。元戦闘員たちはいま、妻たちとは別に拘置所にいる。チュニジア系ドイツ人の元戦闘員。シリアとイラクの数々の最前線で戦ってきたという。『人生最大の失敗だった。宗教の名の下に、ISは私たちをだました。たくさんの人を利用して、戦わせたり、自爆させたりしました』。彼は、過激なテロが今後も各地で起きるのではないかと話す。ISが残した傷は深い。『世界中にISの支持者がいます。彼らはISの実態を知らないから、ISの宣伝やビデオしか見たことのないシンパは、その思想の影響を受けたままです』」。

ISの戦闘員は、首を切ったり、人を簡単に殺したりと、私たちからすると、悪魔のような人たちというイメージがありますが、取材した元IS戦闘員たちを見ると、私たちとそれほど変わらない普通の人たちだったというのを、私も実際に見て思いました。私が会ったISの妻たち、フランス人、インドネシア人、ベトナム人、ドイツ人、トルコ人の妻たちも、普通の女性たちに見えました。しかし、何かのきっかけで、こんなところに行ってしまうという現実がありました。たまたま日本人が行かなかっただけで、他人事ではないと実際に現場に行って思います。

今日話をさせていただいたのは、遠い国の話で、しかも戦争や迫害などの話で、なかなか自分たちに引き寄せて考えるというのは、難しいのかもしれません。でも同じ時代を生きている人たちなのです。自分の周りにも大変なことがたくさんあって、それに目を向けなければならないのは当然ですが、国外のことにも、是非目を向けていただければと思います。そして、自分自身が何かをしようと行動するのにも、まずは「知る」ことが大事だと考えます。現地の人たちも、豊能町に住んでいる私たちと変わらない人たちだと知っていただければと思います。そういう目を持っていただけたらと願います。

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